伊能忠敬の日本地図

江戸時代、伊能忠敬は現代の地図とほぼ変わらない日本地図を作りました。なぜなら、当時の江戸幕府は、蝦夷地現在の北海道を狙うロシアに悩まされていて、国防のために正確な地図が必要だったからです。忠敬は55歳にして日本地図を作り始めたわけですが、その方法は一定の歩幅で歩いて距離を測るというやり方でした。忠敬は雨の日も嵐の日も、危険な海岸線も、常に一定の歩幅で歩いたそうです。こうして忠敬は17年をかけて72歳まで日本全国を歩きました。この努力の結果、大変精度の高い日本地図が完成しました。江戸幕府は地図の偉大さに気づき、国家機密にしたそうです。英国海軍も地図の精度に驚き、日本に開国を迫ったペリーも自分たちが作った地図よりも、伊能忠敬が作った地図の方が正確だとわかり「うかつに日本を攻撃できない」と考えたという話もあります。

この時代の人びとの苦労が、明治に入って、世界に冠たる日本の礎になったという例は他にもあります。幕末の志士吉田松陰は、日本のため、海外密航を試み、投獄ののち死刑となりましたが、日露戦争前に高橋是清が戦費調達のため日本国債の引き受けを海外に求めた時、応じてくれたユーウェン・キャメロンやジェイコブ・シフを動かした理由の一つが、幕府の禁制を犯してまで国のため海外渡航をもくろんだ勇気ある吉田松陰を輩出した国だから、という話もあります。GDPの世界順位が低迷する今日の日本の私たちにとって、おおいに学ぶところがあると思います。

ゼロゼロ融資利用後の倒産

コロナ禍が始まってから、ゼロゼロ融資という融資制度が流行を見せました。新型コロナウイルスにより売上が減った企業に、実質無利子(ゼロ)、無担保(ゼロ)で融資を行う仕組みです。売上減少の数値要件も比較的緩く、多くの企業様がゼロゼロ融資を利用されたのではないかと思います。ゼロゼロ融資は、元本の返済も数年間据え置かれるケースが多いのですが、その元本の返済開始が各企業様で始まってきています。

元本返済の据え置き期間中に、事業を立て直し、資金の無駄遣い等を行っていなければ、返済開始が始まっても問題はないでしょう。しかし、コロナ禍の影響は非常に大きく、多くの産業でビジネスモデルが変わってしまいました。その結果、事業の立て直しが思うように進んでいない企業様も多いでしょう。そのような状況でゼロゼロ融資の返済が開始してしまうと、企業の資金繰りに大きな影響が発生します。

以下は、民間の企業調査会社である㈱東京商工リサーチが調査した、ゼロゼロ融資を利用した企業の倒産件数の推移を示したグラフとなります。


新型コロナウイルスの感染が初めて確認された2020年の倒産件数は少なかったですが、直近の2023年では毎月50~60件程度の企業が倒産しています。

企業は損益計算書が赤字でも倒産しません。しかし、資金がなくなってしまうと倒産してしまいます。企業を守るために最も重要なことは資金繰りです。ゼロゼロ融資を受けている方は、いつからご自身の融資の返済が開始するかはご存知でしょうか。返済が開始すると、今よりも毎月の資金繰りが圧迫されることは確実です。

ゼロゼロ融資の返済開始に耐えるために重要なことは、本業で利益を稼いで、納税して、納税後の資金を企業に貯蓄しておくことです。ゼロゼロ融資の返済猶予期間は、コロナ禍で弱った企業が再び復活するための準備期間です。その準備期間の間に、事業の見直し、効率化、ビジネスモデルの転換などを行って、企業をより筋肉質な体制にすることが求められます。

巷では、ゼロゼロ融資の返済開始に伴い、中小企業の倒産が今後ますます増えてくるという話も耳にします。金利も上昇傾向にありますので、借り換えをするとなっても、利息負担は従来よりも大きくなるかと思います。必要に応じて、金融機関と返済のリスケジュールなどの交渉を行うことも必要でしょう。実際に返済ができなくなってからでは手遅れというケースが多いため、将来の返済額を把握して、資金繰りの予測を行うことも重要です。 企業を倒産という危機から防衛していくために、資金繰りを中心としたキャッシュフロー経営が、今後ますます重要になってくるものと思われます。

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